第700夜「円谷英二」
知らない大学での長い長い勉強会が終わり、彼女Fと帰ろうとしている。すでに薄暗くなっており、言葉を交わすことなく速足で「小竹向原」にある家路を急ぐ。しかし小竹向原がどこにあるのか、二人ともわかっていない。
「線路沿いに行けば良いのでは」「それだ」
しかし、嫌がらせのように路線は煩雑を極め、足元で一部のレールが絡まっているほどである。それでも無理して歩いていると、川にさしかかり、鉄橋の上を歩いていくこととなる。鉄橋は段々細くなり、とうとう黒々とした縄のようになる。彼岸まではあと数十歩ある。
「これは戻ったほうが」「少し考えるよ」
だが、結論は出ている。私は回れ右をしてもと来た狭い橋を歩き始める。
「揺らさないで!」
鉄橋は分厚いゴムのように大きくしなり、私は振り落とされまいと捩れて縄と化した鉄橋に掴まる。財布がぽろっと落ちそうになるが、平常心是道、リフティングの要領でうまくいなし、足の間でキャッチする。そのとき、
円谷 英二が大胆さと細心を学んだのはこの時であった」という字幕が流れる。
そういう設定だったのかと思う。

# by warabannshi | 2015-10-08 00:55 | 夢日記 | Comments(0)
第699夜「渡り」
 トガクレソウの大規模な渡りが発生している。高山植物であるトガクレソウは4枚の白い花弁をつけるごく地味な草本であるが、季節の変わり目に群生地を変える。その一帯に生えるありとあらゆるトガクレソウがいっせいに空へと飛び立つのである。私は駐車違反のワンボックスカーのドライバーをからかうのをやめ(鍵をかけようとする直前に、どこかしらのドアやトランクをこっそりと開けておくのだ)、その崇高な光景を見る。トガクレソウは地上部の茎のごく地面に近い部分を自切し、風向きとは関係なしに西の水平線に向けて浮遊をはじめる。それが、数千万本におよぶため、まるで石灰化した地面そのものが浮かび上がるかのようである。リョコウバトの渡りをはじめてみたアメリカ大陸の入植者が感じたであろう、気圏の底に棲む者の無力感に、私もこの高山植物の大移動を見ながら加わる。
# by warabannshi | 2015-10-06 07:23 | 夢日記 | Comments(0)
Tweetまとめ:地域再生のコンセプト
2012年08月02日(木)

福田ゼミでの合同読書会から帰宅。地域再生のコンセプトとして「風土性」を提起するときの、可能性と注意点など、新しい角度から考えられて良かった。以下、ちょっと備忘。

・「青少年のモラル崩壊」が問題視されるが、べつに青少年に限ったことではなく、「壮年、老年層におけるモラル崩壊」(60代以上の暴行・傷害など粗暴犯の数は十数年前に比べて約20倍。高齢者増加数に対する粗暴犯検挙率も、日本は高ランク)も含めて、それを食い止める仕組みが、地域には必要。

・地域社会学は、農村社会学から分岐したもの。家村論の放棄+アメリカ型コミュニティ論の導入(1969 年「コミュニティ-生活の場における人間性の回復-」http://t.co/uFHosRgr)。実質的には、失敗。現代の風土論はこの失敗をふまえる。

・地域論は、それがどのような社会運動、政治運動の文脈を帯びているかに意識的でないと、からめとられる。例えば、和辻風土論は日露戦争後のナショナリズムと親和的。「自然」という語もけっして中立的ではない(cf.J.A.トーマス『近代の再構築―日本政治イデオロギーにおける自然の概念』)。

・風土のモラル、地域社会の規範について論じるときは、「移動」の問題を無視してはならない。外部から来た移住者にとってのモラルと、その土地の定住者にとってのモラルがどのような相互関係を持ちうるか。とりわけ、労働人口ががりがり減っていくこれからの日本において、移民受け入れの話と連接。

・人口減少と、道路や橋や上下水道などのインフラの寿命(http://t.co/0tjZLWNg)から考えても、すべての地域村落を存続させることは、不可能。だからといって、「村が消えたのは自己責任です」「淘汰です」と澄ましていられるほど鉄面皮でもない。でも、不可能。どうする?
# by warabannshi | 2015-10-02 03:24 | メモ | Comments(0)
第698夜「失敗」
A.
 巨大なムカデの体内をくりぬいて作ったドームのなかにいる。一つ一つの体節が小部屋になっていて、半透明の瞬膜のようなもので仕切られている。薬物か何かで処理されているだけで、この巨大ムカデはまだ生きているのかもしれない。小部屋から次の小部屋へとおっかなびっくり進んでいくと、突き当りになる。肛門に達したようである。戻ろうとするが、瞬膜は動かない。可変性を失い、周りの壁のようにキチン質のとぼけた色合いになってすっかり硬化している。叩いても、蹴飛ばしても、びくともしない。しまった、これは消化されるパターンか、と観念して、近くの椅子に腰かける。ほとんど真っ暗に近い空間をしばらく見つめていると、めりっと壁が破壊される。光が射す。助かった、と思い、外に出ると、そこは下草の生い茂る照葉樹林の森であり、手には20万40円のレシートが握られている。救助のための手間賃にしては、高い。このムカデ・ドームの弁償代だろうか。頭を抱える。

B.
 ワシントンDCに出張に行くために、おそろしく寂れた地方空港で手続きをしている。国際線が来るのかと訝しむが、ちゃんとゲートはある。しかし電光掲示板はなく、黒板で便の発着が知らされる。定期船の待合室みたいだと思う。出国手続き間際でパスポートを忘れたことに気付く。真っ青になっていると、その場で証明写真を撮り、臨時パスポートを作ってくれる窓口まで案内される。ポラロイドカメラと鉛筆と厚紙で、さらさらと玩具のようなパスポートが作り上げられていく。本当にこれで良いのか。隣では、ESTAも発行している。
# by warabannshi | 2015-09-26 10:09 | 夢日記 | Comments(0)
第697夜「孤児院」
 生まれ育った孤児院での食事会の誘いを受けていたことをすっかり忘れていたことに気づき、学校のトイレの洗面台の前で落ち込んでいると、名前を知らない生徒が入ってきて、「先生、トイレの中で歌わないでください」と苦言を呈する。もちろん、高歌放吟したい気分からはもっとも離れているので、生徒の方をふり返らずに「私じゃないよ」とだけ言う。
「でも、たしかに太田先生の声でしたよ」
「誰かの声が反響してそう聞こえただけじゃないの? 個室を調べてみたら?」
 自分もなんだか気になり、その生徒と一緒に個室のドアを順番に開けていく。
 最後から二番目のドアに手をかけたとき、なかから確かに私自身の気配を感じる。躊躇したが、生徒が後ろにいるので、思いきってドアを開ける。そこには狭い個室に布団を敷いて芋虫のように眠っている私がおり、いったい何をしているんだと問いただそうとした途端、目が覚める。
# by warabannshi | 2015-09-24 09:30 | 夢日記 | Comments(0)
読.001『できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか』
ポール.J.シルヴィア, 高橋さきの訳(2007=2015)
『できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか』講談社
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=984061531536

 「たくさん」書けることが「できる研究者」かどうかは別として、「最低限書ける研究者」になるために読む。「できるかぎり多く働けば、一日あたりどれくらい書けるか」という自問ではなく、「○○と××を書き終えて、そして他の時間を思い煩うことなく楽しく過ごすにはどのように書かなければならないか」という自問から、研究者にとってのライフハックは生まれるのではないか。

[目次]
第1章 はじめに
 「本書を読む際には、書くという作業が、競争でもゲームてもないことを心得てほしい。どれだけたくさんの量を欠いてもよいし、少ししか書かなくても良い。自分が書きたいと思うよりたくさん書かなければならないなどと思い込まないこと。著作数や論文の多い研究者が、すばらしい研究者だと勘違いしないこと。論文を公表する一番の理由は、科学の世界でコミュニケーションをはかることにある。論文や書籍を出すことは、科学というプロセスの当然かつ必須の目標だろう」(7頁, 一部改変)
 本当にそう。

第2章 言い訳は禁物―書かないことを正当化しない
 「一気書き」については否定的。大事なのは、執筆日数や時間数ではなく、規則性であると。
「自分の執筆時間は、断固として死守せねばならない。執筆時間はすでに割り振り済みなのである」(16頁)。
 執筆時間のなかに目次や章の構成の時間は含むのかと思っていたら、やはり含むのか。文献を読むのも、校正刷りをチェックするのも、執筆方法に関する書籍や記事を読むのも。
「書くというのは文字を入力するだけではない。書くというプロジェクトを遂行する上で必要な作業はすべて執筆時間である」(20頁)
 しかし「書くというプロジェクト」の兵站のために、紅茶を淹れたり、洗濯物を畳んだりするのは、メールの返信をしたりするのは、これは許されるのだろうか。

第3章 動機づけは大切―書こうという気持ちを持ち続ける
 「動機付けは、具体的であれ」。
 著者が心理学者だからか、動機付けとかの話になると参考文献が良く出てくる。本書は類書と違い、ちゃんと巻末に引用文献一覧がある。とても好ましい。なぜ啓発本やハウツー本には文献リストをつける慣習がないのか。
 ともあれ、目標を書き出し→優先順位をつけ(1.校正刷や入稿用原稿のチェック, 2.〆切ありの事項, 3.再投稿のための原稿修正, 4.新たな原稿を書く)→進行状況を記録する(ワード単位)という流れは、目新しくはない。ただ、執筆時間に助成金の申請,事務文書の執筆を入れるのは予想外だった。それならメールの返信もありということになり、執筆時間はまるまるメール返信に当てられかねないのだけれど、その辺りの線引きはどうするのだろうか。
 そして、自分の場合、Twitterでいろいろメモしている時間は、馬鹿にならない執筆時間だったということもわかった。著者が行っているワード数による進捗管理は、Twitterによるツイート数で代替できるのではないか。今回なら、14ツイート。平均して100字くらいとして、1400字/時。読書記録ではなく、正味自分の頭で考えた事柄を蚕が糸を吐くように書いていってこの文字数になるか否か。増えるのか減るのか。
そして、それらのTweetを流しっぱなしにするのではなく(必要になったらTwilogで検索すれば出てくるだろうから、特にいままで編集してこなかったけれど)、こうやってブログにまとめようと思う。この決心をさせた点で、本書は読む価値があった。

第4章 励ましあうのも大事―書くためのサポートグループをつくろう
 特に言うべきことなし。アンソニー・トロロープという作家を知る。
https://kotobank.jp/word/%E3%83%88E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%97-107011
 そういえば無頼派で知られる太宰治も、毎朝決まった時間にGペンで原稿を書いていたという逸話が。

第5章 文体について―最低限のアドバイス
 「まず書く、あとで直す」。これも重要。というか、それ以外に何があるのか。

第6章 学術論文を書く―原則を守れば必ず書ける
 「アウトラインを作成せずに文章を作成してはならない」。一気書きした後で目次を作るという手順で卒業論文を書いたせいで、いまだに書く前にアウトラインを作るのが苦手。とはいえ、これもシラバス作るように時間をかければなんとかなるのかも。

第7章 本を書く―知っておきたいこと
 アウトラインの話。「しっかりした目次なしに書き始めることだけは禁物だ。本書について言えば、各章の中身を書きはじめるまでに2ヶ月くらい目次と格闘していたように思う」(137頁)。じつに安心する。草稿を章ごとのファイルに放り込んでいく形式は良い。

第8章 おわりに―「まだ書かれていない素敵なことがら」
 スケジュールを立てようという話に始まり、ワード数で進捗を管理することを紹介し、アウトラインなしの執筆は無謀だと戒める。そして最後に「それらをするのは、まとまった時間に執筆以外のことをして人生を楽しむため」で締める。うむ、アメリカン。
# by warabannshi | 2015-08-23 01:46 | メモ | Comments(0)
第696夜「4コマ漫画」
 筆で簡単に描かれたこまっしゃくれた児童2人が手をつないで歩いていると、自分たちと同じくらいの大きさの白い円盤状の何かが先を歩いているのを見つける。「月の明るい部分のようだね」。そして先を歩く白い円盤の方も、うすうす感じている。「何かの原因が近づいてくる」。
 2人の児童は、白い円盤の一部と思しき欠片をそれぞれの手にもって、それを頬張っている。「案外固いね」、「煎餅みたいだ」。そして白い円盤のほうも、アンパンマンのように、欠けた図体のまま、変わらない表情で歩いている。
 そんな4コマ漫画として、見ていた夢をしたためていると、後ろから名前の知らない誰かが私に声をかける。
「そういうのって、太田さんのなかで何に位置づくんです?」
私は答える。「記録です、アウトリーチが違う類の」
そして、ケント紙に染みこませた薄墨が乾くのを待つ。
# by warabannshi | 2015-06-20 06:41 | 夢日記 | Comments(0)
第695夜「四本脚」
四歩脚という渾名をもらい、南国のリゾート地にいる。焼けるような砂浜で、往年のポカリスエットのCMに出てくるようなスポーツを片端からやったところで、たどり着いたのは自転車だった。しばらくそれほど大きくない島を走ったあと、緩い登り坂のふもとにある木製の電信柱によりかかり、集中して自分宛の知らせを受け取ろうとする。どうでも良いニュースに混じり、はらぺこあおむしという渾名の、顔を思い出せない友人が自殺したことを知る。葬儀に出たいが、喪服の持ち合わせがない。白いワイシャツの下に黄緑色のティーシャツを着ていけば、青虫のようで供養になるだろうか。
# by warabannshi | 2015-05-28 06:34 | 夢日記 | Comments(0)
第694夜「蜘蛛の巣」
寓話―揺れ動く葉の先端に糸をかけ、巣を作ろうとする蜘蛛は、八つのうちの二つか三つが常に葉から離れるせいで、巣を大きくすることができない。
# by warabannshi | 2015-05-23 08:45 | 夢日記 | Comments(0)
第693夜「自転車」
見知った国立の道を自転車で走っている。自転車に乗るのは久しぶりなので、ついつい目一杯の力を込めてこぐ。ペダルをこぐ、というよりも、大臀筋から広背筋、僧帽筋までを一息にしならせる力を、両腕と両脚を通して自転車に伝えていく、伝達路としての感覚がとても心地よい。計画的に整備された街路は直線が多く、自転車と体の輪郭の変化に集中するにはうってつけである。本当に良く自転車と体がなじんだときは、まるで進行方向にむけて空気に割って入る1枚の紙のようになる。紙のイメージを得た無数の筋原繊維は、ともすれば逃げていく力をペダルへと垂直に落としこむ。そうやって考える具体物となり、中央線沿いの舗装された道路を走っていると、突然、アスファルトが途切れ、セイヨウアブラナの群落のなかに踏み固められた小道が遠くまで続く。数えきれないほどの黄色い花に囲まれて、自転車を降り、羽化したてのミツバチのように視野に眩惑される。
# by warabannshi | 2015-05-10 08:22 | 夢日記 | Comments(0)



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