カトリックの諸聖地を、三人でマウンテンバイクで回っている。うち以外の二人の顔を、うちは知らない。
いまは、フランス、モン・サン・ミシェル修道院付近の、坂の多い、というか平坦な道がない小さな街にいる。初夏。街並みは、ジブリがどこかでぜったいに描いていそうな風景。『ハウルの動く城』の最初のシーンで出てくる街の、蒸気機関系をもうちょっと慎ましくしたような感じ。あるいは『魔女の宅急便』の海の見える街を、四分の一くらいに縮めたような。
パン屋に入って、クロワッサン(三日月型ではなく、楕円形の)をひとつだけ、買う。
店番のお姉さんは、典型的なフランス人の美人。
「25 yen」
なんと、ここでは円が使えるのか。と感激する。おまけに安い。
嬉しくなったので、ぜんぶ五円玉で25円を支払う。
「These coins are five-yen-coin. five-yen-coin have fortunate of spiritual connection.」
五円玉のご縁を、賽銭の風習の前提なしに説明するのはむずかしい、と思う。
クロワッサンは非常に美味だったので、半分だけ食べて、あとは夜にコーヒーを飲みながら食べようと思い、残しておいた。