西部劇で使われているような食堂。突風が吹いたら壁が四枚ともばたばたばたと倒れて、ドアだけが残る、みたいな状況になりそうな安普請。
「Don't Shoot the Piano Player!」という貼り紙がピアノのところにしてあって、ちょっと感動する。“Tirez sur le pianiste(ピアニストを撃て!)”はやはり間違っていた。
テーブルは二脚あって、それぞれ四人掛け。片方は満員で、もう片方は一人ぶんだけ空いている。ただし、誰かの食べかけの白身魚のポワレの皿がある。
その空席にかけようと思ったら、五十代くらいのイタリア人男性がひょいと座ってしまう。
「ああ、君、この食べかけの皿をさげてくれないか?」
なんとなく、「文句を言ったら負け」な雰囲気。
仕方がないので、給仕役を務めようと、キッチンに行く。
「テーブルの上に食べかけのポワレの皿がそのままになっていましたけれど、いいんですか?」
「歯形がついている?」と料理人。
「はい」と私。
「歯形で誰の食べかけか、わからないかな?」
「男性のか、女性のかぐらいはわかると思いますけれど――」
その瞬間に、食堂で銃声。
慌てて戻ると、マスケット銃を手にした、猛然とヒゲを生やした男が客たちを皆殺しにしている。
マスケット銃を奪おうとしてヒゲ男に組み付くが、あえなく失敗。