爬虫類や昆虫類が、私の部屋にうようよいる。体長一メートルほどのワニが私の脚に噛み付こうとするので(威嚇のためではなく、まったく捕食のために)、私は右足の裏でワニの口を踏みつけながら、天窓から逃げようとする。天窓のガラスを外そうとすると、まるで窓枠に積もっていた砂埃のように、米粒ほどの黒い甲虫の死骸がドサッと降ってくる。頭や肩を甲虫の死骸まみれにして、非常に嫌な気分になりながら、けれど右足の裏の下ではワニが口を踏まれたままもがいたり唸ったりしているので、猶予はない。天窓のガラスを外すと、ガラスと窓枠のあいだで潰されたトッケイヤモリの死骸がまた降ってきて顔に当たる。
「何やってるの?」
彼女Fが、室内のこれら忌わしいものらなど存在しないかのように、奮闘している私に声をかける。
「ちょうど良かった! このワニの口を押さえていてほしいんだ」
「いいけど」
Fは造作なくワニの口を押さえる。すると、ワニは急速におとなしくなる。
私は天窓から這い出ようとしたが、天窓の外も大小さまざまな羽虫が霧のようになってぶんぶんうなっているので、すっかり嫌になり、這い出るのをやめる。
床に下りると、Fは三十センチほどになったワニを、猫のようにじゃらしている。
「口を押さえておいて、と言ったはずだけど?」
私はあくまでも彼女の安全性のために言ったのだが、そんな指摘を受ける筋合いはないと言わんばかりにFは私を睨む。