ピサロの絵のなかのような、幸福な田園地帯。知らない友人の家に招かれて、もう一人の知らない友人とポプラ並木を歩いている。ミツバチが一匹、追い払っても追い払っても、しつこくまとわりついてくる。
「あ、しまった!」私は不意に思い出す。「アンズ酒、自家消費用のばっかりで贈答用のを持ってきていないや!」
「バッカだなあ」と友人。「きれいな空瓶に、中身を移しかえちゃえばいいじゃん。それを酔いが回ったときに渡せばわからないよ」
そんなことを話していると、知らない友人宅に着く。友人宅にはいつも多忙なMさんがいる。
Mさんが私のほぼ日手帳に興味を示したので、しばらくこの手帳の使い安さについて話す。
「だが高価いよ」
「うちもそう思います」
Mさんは次の用事があるとかで、車で出かける。返してもらった手帳の、あるページの下に印刷されているコラム、「月は無意識的に精神性を持っていて…」云々という文章に取り消し線が引かれていて、「月に精神性を無意識的をもたらしているのは、お前だ!」と書き加えられている。
Mさんの無意識的な精神性が、これを書き込ませたのだろう。
「実在するんだ、ああいう人は」
同感。