タコ型ロボット「泳々(えーえー)」の運用実験をしている。沖合まで船を出して、自律式の「泳々」とともに遠泳しながらデータを採るというのが、実験の趣旨。
「なんでこんなアホみたいな型のロボットを作るんだろうね。頭と腕によっぽど自信があるのかね」
泳ぎながら私は憎まれ口を叩く。
「バック・トゥ・ザ・フューチャーの見すぎなんですよ」
名前の知らない後輩も泳ぎながら調子を合わせる。
波が強いせいか、「泳々」はなかなか快調に泳がない。終いには、「泳々」は溺れて、八本の触手を後輩にまきつかせ、後輩もろとも波間に沈んでいってしまう。
私が慌てていると、「取り乱すな、太田君!」というメガホンの声。
小さな一人乗りヘリコプターが、200mほど向こうの海面すれすれに浮かんでいる。
「こんなこともあろうかと、エイ型ロボット「泳々2」を開発しておいた! これで後輩を救いたまえ!」
たしかに「泳々2」が向こうからやってくる。バタフライ泳法の要領で。しかし、波が高いせいでひっくり返り、ヒレをバタバタさせてもがいているうちに、一人乗りヘリコプターを叩き落とす。
私はすっかり呆れて、二人を助けるために息をとめ、潜る。