仲の良い人たちと一緒に花火見物に来ている。ビールを飲みながら下腹部に響く爆音を浴びるのはこたえられない。雷鳴を間近く聴いているようで、最高だ。そう感想をもらすと、
「煙となんとかは高いところが好き、太田君とキノコは雷が好き」とSさんが歌うように言う。
そういえばキノコは雷が落ちた朽木によく生えるという。なぜなのか。
「なんで雷が落ちるとキノコが生えたりするんですか?」
「それは糖化作用のプロセスで、イオン勾配が急速に変わることによってね…、って、お前は生物の教師だろ。それぐらい知っておけよ」
Mさんは近くにあった紙に数行の化学反応式を書き付けながら言う。しかし、その式を見てもなぜキノコが雷が落ちた朽木によく生えるようになるのかわからない。書かれた反応式はぷるぷると震えていて、所々が発光している。打ち上げ花火はさらに景気良く上がっていて、怖いほどである。恥の上塗りをすることもないので、あとでGoogleで調べようと思う。