私と同じくらいの巨大な黒曜石の結晶が、私の斜め後ろでいつも静かに浮かんでいる。黒曜石は、もの言わぬ友人であり、兄弟である。
紡錘形のフォルムは、マグリットの作品「現実の感覚」を私に思い出させるが、それほどの不穏さを秘めているわけではない。私は、黒曜石のことをすっかり気に入っている。
あるクリーニング屋に入ったとき、不意に黒曜石は砕け散る。砕け散るときさえも静かにその微塵を床にぶちまける。
私が大声をあげて、練り消しを使って、散らばった黒曜石の破片を回収していると、クリーニング屋の主人がカウンターの奥から出てきてしきりに動きまわるので、破片はますます細く踏み砕かれ、床に擦り込まれてしまう。
激怒した私は練り消しを棄て、クリーニング屋の主人に飛びかかり、馬乗りになって泣きながら彼の顔を殴打する。だが、彼は不敵な笑いをやめない。殴られているのに、指で私の鼻先を弾く。
黒光りする練り消しは餅ほどの大きさより大きくなることはなかった。