飛行場で始祖鳥が来るのを待っている。飛行場といっても魂が抜けるほどの広っぱには何の設備もなく、草むらの中にただ一本の滑走路が走っているだけである。
「始祖鳥、見たことないの?」
一緒に待っている名前の知らない友人が言う。
「近くでは、まだ。
ダチョウは見たことあるんですけどね」
「男の始祖鳥は弱いんだよ。これから見られるのも、女の始祖鳥かもしれない」
「豆とかあげてもいいもんですかね」
「水とか冷茶のほうが、喜ぶんじゃない?」
茫茫と生いしげる、草の葉先や穂の向うに、屋根の低い私の家がある。住んでいる近くで始祖鳥が離着陸しているとはついぞ知らなかった。名前の知らない友人に誘われなければ生きていて損をするところだった。
わくわくしていると足元で何かが慌ただしく動く。
紅色砂岩の巨大なミミズが、草むらを裂くようにして這い進んでいく。