亜熱帯の蔓植物が繁茂しているジャングルにいる。息苦しく、まるでなにかの動物の体内にいるようである。しかしここは布屋敷の小部屋であり、蔓植物はじつは迷彩である。事実、私が動くと、緞帳に投射された映像が情けなく揺らめく。
「とはいえ、ジャングルで躁状態になるのってのは、悪くないだろ?」
ディズニー映画に出てきそうな体長二〇センチほどの悪魔が言う。尻尾の先端は当たり前のように矢印型である。
私は湿気で酸欠状態になりそうだったので、彼を無視し、壁を一〇センチほどの間隔でノックし、ドアの在り処を触診する。
「nonchalanceは損をするぞ」
「いや、いいから」
「だったらノートパソコンで地上四〇階に通信するんだな。もっとも、ここにはノートパソコンなんてないわけだけれど」
しかし私は自室のベッドで安眠している私を起こす。目覚めた私は、布屋敷で困苦している私を助けるために、ノートパソコンで地上四〇階への通信を試みる。しかし、どこに通信していいのかわからない。自室はベッドと壁とノートパソコン以外、何ものかに略奪されている。