友人Hが王族の一員だったことが、彼の結婚で明らかになり、祝宴が催されている。私はスーツ姿のまま、三次会のカラオケ屋に急ぐ。
カラオケ屋に続く狭い階段の壁には、たくさんの造花、そして、靴の泥を落とすための緑色のマット(新品)が貼り付けられている。
「やはり友人Hの出迎えのためですか?」
部屋へ案内してくれる店員に聞くと、
「椰子の木の葉をイメージしてみました。Hさんはハワイ島のご出身だそうで…」
初耳だ。もしかして、王族ではなく、酋長の一家の間違いなのではないかと思う。
部屋はお座敷で、十人ほどの友人らは車座になってすっかり出来上がっている。ベトナム料理の大皿が置かれている。Hの姿はない。
「太田の曲、入れておいたから!」
「いま、Hのやってたバンドの曲縛り」
口々に言われ、ビールとマイクが手渡される。選曲が終わり、聴いたことがあるようなないようなメロディが流れてくる。歌詞は以下のようなもの。
極彩色の海の 幸
****** ******(不明)
****** 臍が枯れても
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