俳句の品評会が、中学校の教室で行われている。前の黒板に5つ、後ろの黒板に2つ、それぞれ白いチョークで五七五が縦書きされている。7つとも私の詠んだ句らしく、うれしくもあり、また余計な事をしている様な気がかりもあって、曖昧な気分で座っている。教室には何人か人が動いているのだが、それが生徒なのか何なのかわからず、友人Sの顔は見かけたが、2枚重なった紙にお互いのインクが裏移りしているような、奇妙な遠さがある。
私が教室の真ん中あたりの机に座っているにもかかわらず、どんどん句には寸評がチョークで書き足されていく。そのなかに、「世界一どうでもいい(応)」というのを見つける。最初の夢の句に付されたもので、しかし、7句ともすべて夢の句なのだから、お前の夢の記録など世界一どうでも良い、ということだろう。字形から、何人か、書いた生徒に心当たりがある。とはいえ、わかったところで、それもまた、どうでも良いことなので、「世界一どうでもいいと感じた対象に、『世界一どうでもいい』と書きつけるに至った感情の流れ」を推測してみることにする。
便々とどれだけ時間がすぎたのかわからないが、チャイムが鳴る。黒い影の人々が、こぼれ落ちるように教室から出ていく。私も一粲を博している者の曖昧さがとんで、急いで教室を出る。なぜ教室を出ているのかわからない。しかし、教室の外には、奇妙な風体の男性が、白衣に明るい茶色の長髪を後ろで束ね、赤いセルフレームの眼鏡の左眼の下に傘立ての番号札のようなプラスチック片をぶらぶらさせている男性が、待ちかねていた、というように私と一緒に走り出す。