コンドーム販売機のなかにはいって空中浮遊する女の子を描いた、鬼頭莫宏の最新作。
機械は、底面の半径が一メートルくらいの円錐状の透明なカプセルの、とがった部分を切り落としたもので、自動販売機にすら見えない。底面の円周と、天井部分だけが灰色のプラスチックのような物質でコーティングされている。ベルギーとかフィンランドとか北欧の、奇抜なデザインの洗濯機になら見えるかもしれない。でも、それはコンドーム販売機という設定。(買いたい人は透明な壁ごしに商品を見るのだろう)
女の子は人形で、でも完全に自動で内発的、かつ感情的に動く。(じつに鬼頭莫宏らしい設定。『ヴァンデミールの翼』みたい。というか、そのままだ)
髪の毛、というか、髪型を模した蛍光成分の入ったべたべたしたものが塩素色(青白に、すこし緑をまぜた色)で、あとの素材はみんな乳白色、あるいは象牙色。十二、三歳のやせ形。操縦するときは裸体になる。(サービスカットを作るために)
コンドーム販売機のなかに入った女の子の意志、というか接続されたプログラムで機械は浮き上がるが、場所を移動したりするためのコントロールには楽譜(のプログラム)が必要。サティっぽい題名(「干からびた胎児のたの前奏曲」みたいな)のピアノ曲の楽譜で、サンルームの窓から屋敷の外に出て行けるらしいけれど、CDにはその直前の楽譜しか登録されていない。
直前の曲をプログラミングすることで出ていこうとするが、どうしても陽光の上昇気流でコンドーム販売機は縦回転してしまう。(四〇〇リットルくらいの容量の機械はものすごく軽くて、数グラムしかない。女の子は浮遊する機械のなかでさらに浮遊しているので(立っていたか、座禅(体育坐り?)を組んでいたか忘れてしまった)縦回転しても、大丈夫)
ガラクタがほっぽり出してある中庭に、数体のロボットと、コンドーム販売機と女の子人形がいて、ロマンシング・サガ3(?)のロボット編のような呈をなしている。地面の芝生は痛みきり、すでに泥地と化している部分もある。
屋敷は無人なのだろうか?
女の子人形が浮遊する(そして屋敷から抜け出そうと試みている)のは評判で、ロボットなのに汗くさい、格闘ゲームのキャラクターを模した一体にからかわれている。それが、屋敷から抜け出そうとする試みのせいなのか、乗っているもののせいなのか、両方なのか、どっちでもないのかは忘れた。