弟の友人が公園設計のコンペで賞をとったので、弟と弟の友人とうちの三人で「百済」という赤ワインを飲んでお祝いをしている。
「ほんと××のおかげでアイディアが固まりましたよ」
「いや、俺の名前、良彦なんだけど」
弟の友人は弟を褒めるたびに弟の名前を間違える。ちょっと面白い。
場所は、前に友人Uの部屋だった、海の家みたいに年季の入った畳敷きの六畳間。
日活ロマンポルノに出てきそうな時代遅れの花柄のカーテンが眩しい陽ざしを遮っているおかげで、ちょうどいい。
「あんたたち、百済、飲んじゃったでしょ!」
姉が突然、部屋に入り込んでくる。
「だって、ケースに入ってるのは全部飲んでいい、って言ってたよ」
「ふつうは安いやつから順番に飲んでいくもんなの!」
「酔っぱらったら、高いやつの味がわからなくなるじゃん」
なんというか、客を招いている雰囲気じゃない。
弟の友人の設計した公園を見るために「美しの里」に行く。
「京王永山からすぐですよ」
京王永山の、なぜか五百円玉が何枚も落ちている改札口を抜けて、シャトルバスに乗る。
シャトルバスに乗っているのはいつの間にか高校時代の友人たち。
「美しの里」はまったく過疎化していて、人影がない。
遊園地らしい施設では、無人のゴーカートが互いに当たりながらコースを周回している。
「あ、すいませんすいません」
係員の藤井隆がやってきて無為に周回しているゴーカートを止める。
せっかくなのでみんなでゴーカートに乗る。
路面には駄菓子が散乱していて、それをコース外にはじき出すとポイントになる仕組み。
結局、友人T(女性)の一人がほとんどの駄菓子を外にはじきだして優勝。
藤井隆が優勝の記念に、みたいな流れでTにキスしようとするので、怒った他の友人たちが係員室に藤井隆を閉じこめる。
京王永山駅には行ったことがない。京王永山駅の構内だと思い込んでいたのは、小田急線の片瀬江ノ島駅だ。記憶のなかで初めて江ノ島に行ったのは中学生のころで、当時は廃墟みたいだった植物園を見て、江ノ島も終わりだと思っていた。(植物園はサムエル・コッキング苑へと新装して、フレンチ・トーストが美味しいと評判のカフェがあるお洒落な灯台になっている。)