人間がほとんど住まなくなった地球のテラフォーミング(惑星改造)をやっている。
ものすごく滑りやすい半円状の床の地下通路を、下へ下へと降りていって、玉川温泉がちゃんと湧いているか、というチェック中。
ちゃんと湧いている、という図がアニメーションで示される。(教育テレビか週間こどもニュースで地熱の構造を説明するときのような図。)
ものすごく滑りやすい床をもどる。
滑って、壁に引っかからなかったら、地下水流に流される。
流された後でどうなるかは知らない。
月面のような地上に出ると、無線で仲間から他の人間が見つかったという知らせ。
無人ヘリコプターからの映像はうち捨てられたトラックを映したところで、唐突に途切れる。
「撃たれたんだよ」
十五人くらいいる仲間の一人が言う。
「高い機材だったのに…」
トラックに近づいていくと、果たして二人のサバイバルな格好をした男女がいる。
廃トラックは彼らの住居だったらしく、銃を構えてブーイングと帰れコール。
血の気の多い仲間の一人が信じられない口径のマグナムを発射して、あとはどうなったかわからない。
女性がなかで寝ていたと思しき衣装箪笥がある。
なかにはガムテープでぐるぐる巻きにして保温性を高めた寝袋と寝息の残り香。
よく見ると、箪笥は自宅の箪笥で、ここは人類がちゃんといる自宅。
母親が台所で十五人分の片づけをしている。
「あなたの部屋にカップ焼そばとヨーグルトがたくさんあったんだけど、あれなに?」
「農工大でもらった。買い出しで買いすぎたんだって」
「ヨーグルトは冷蔵庫に入れときなさいよ」
じつに日常的な会話。東大の院試の勉強をしなきゃ、と思う。
玉川温泉には行ったことがないが、祖父が病気になったとき玉川温泉の水を四十リットルくらい車で運んできて飲んでいたことはある。効いたかどうかは十年くらい前なのでわからない。
二人の男女は映画『スワロゥテイル』に出てくる狙撃手カップル、ランとシェンメイにそっくりだった。
フランスの山間部ではタンスの形に似た箱ベッドというのがあって、背中を半分起こした状態で眠る習慣がある。
正確に思い出せば、東大の院試の勉強をしなきゃ、と思うのは、その日が東大の入試日だったからで、だから夢のなかで夢に逃避していたのだ。