たぶん、刑務所から脱走している四人組。そのなかの一人。二十歳代中頃。(追記:007の新ボンドみたいな金髪のスポーツ刈りだった。)
トンネルのなかにある、クラブなのかディスコなのかわからない騒々しいバーに行く。
床は金網(菱形の、くさびのようなデザインの金網)。その下から白っぽい光が射していて、テクノの調子に合わせて強弱・明滅したりしている。床からの光が、バー全体の照明になっているので、光だけで酔いそうな雰囲気。たぶん、DJが光量の調節もしているんだろう。けれど、客が酒とかピーナッツとかをこぼしたら、金網の隙間にはまって掃除するのが大変なんじゃないか? といらない心配。
他の仲間たちが慣れた動きで緩やかな曲線を描いているカウンターにつく。
このバーはたまたま脱走中に見つけたものだと思っていたが、三人は行きつけらしい。
「オレンジを、1:3で」
「俺は×××(聞き取り不能)の、1:4で」
彼らはオーダーをしたあとで、勝手にLサイズのグラスに濃縮オレンジジュースと思しき橙色の液体を注ぎ入れる。たぶん、これをウォッカか何かで割るんだろう。
なんとなく、スターウォーズ・エピソード4で、ルークたちとハン・ソロが契約を結ぶあのバーにここは似ているかもしれない。
飲むよりも、空腹なので、なにか食べたい。
「カプリチョーザ・ピザください」
カウンターの裏のキッチンで慌ててピザの準備に取りかかる眼鏡の丸い女の子。
なんで作り置きしておかないんだよ! と主任らしき人に怒られている。
カプリチョーザは気まぐれって意味なんだから具材とか適当でいいよ。早くしてね。と心のなかで念じる。
ピザを待ちながら、少しずつ思い出してきた犯罪の記憶。――
かなり山の中のラブホテルで、買売春をしている女子高生と中年男性。
「なんでキャンペーン中だからってクーポンが使えないんだよ! 逆だろ!」
支払いを済ませた中年男性が激昂している。
男性の車(左ハンドル)の助手席に乗ると、男性は忘れ物てもしたのか、どこかに行ってしまう。その隙に、数人のチンピラたちが車にわらわらと群がってくる。車上強盗? だったら人のいないときにやれよ、と思う。
戻ってきた男性。自分の車がいままさに荒らされているのを見てさらに沸騰。
怒鳴りながら運転席に乗り込む。
「轢いちゃいましょうよ」
「そうだな!」
そして、二人ばかりを車体の下に巻き込んで、山奥の駐車場を後にする。
――。でも、この事件のどこに自分が関わっているのか、さっぱりわからない。